DAFZの法人税0%は本当か?DAFZ企業のQFZP要件と実務上の落とし穴
ドバイエアポートフリーゾーン(DAFZ)は「法人税0%」と語られることが多いものの、実際には適格所得(Qualifying Income)に限られた優遇です。DAFZ企業がQFZPとして0%を受けるための要件と、9%課税との境界線、指定ゾーンとしてのDAFZ特有の論点を実務目線で解説します。
DAFZ企業の法人税0%は「QFZP要件をすべて満たし、かつ適格所得である部分」にだけ適用されます。本土向け売上は原則9%ですが、DAFZは指定ゾーンのため、物品の流通には例外があり得ます。適格所得以外の収入がデミニミス基準を超えると、5課税期間にわたって0%を失います。設立段階から取引構造を設計することが、最大のリスク対策です。
DAFZの法人税率0%とは
ドバイエアポートフリーゾーン(DAFZ)をはじめとするUAEのフリーゾーンでは、QFZP(Qualifying Free Zone Person:適格フリーゾーンパーソン)の要件を満たす企業の適格所得に、法人税率0%が適用されます。DAFZでは外国資本100%での保有や、利益の本国送金も認められています。
DAFZには20以上の業種から3,400社以上が登録しています(DAFZ公式発表)。Biz Easyのクライアントを含む日系企業もDAFZに拠点を構えています。
なお、QFZP制度そのもの(要件の全体像・適格活動の一覧など)はQFZP完全ガイドで、UAE法人税の基本はUAE法人税の解説記事で詳しく解説しています。本記事では、DAFZ企業に特有の論点に絞って説明します。
DAFZ企業がQFZPになるための要件
QFZPとして0%を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると、その企業の所得全体が通常の法人税の対象になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 十分な実体 | DAFZ内に、事業に見合った資産・従業員・支出があり、中核的な所得創出活動をDAFZ内で行っていること |
| 適格所得の獲得 | 適格活動(物品の流通、物流サービス、グループ内取引など)から所得を得ていること |
| デミニミス基準 | 適格所得以外の収入が、AED 500万または総収入の5%のいずれか低い方以内であること |
| 通常課税を選択していない | 9%課税を自ら選択していないこと |
| 移転価格 | 関連者取引を独立企業間価格で行い、文書化の要件を守っていること |
| 監査済み財務諸表 | 監査を受けた財務諸表を作成・保存していること |
- 他のフリーゾーン企業との取引
- 海外顧客への販売・サービス
- 指定ゾーン内・指定ゾーンからの物品の流通(条件あり)
- 本土企業へのサービス提供
- 本土の個人(消費者)との取引
- 対象外活動(Excluded Activities)からの所得
「フリーゾーンだから一律0%」という理解のまま事業を進めると、本土向け取引が発生した時点で想定外の課税リスクに直面します。実体要件と取引区分の管理が、実務上の要です。
指定ゾーンとしてのDAFZ:物品取引の特例
DAFZは、UAEの税法上の指定ゾーン(Designated Zone)に該当します。これがDMCCなど他のフリーゾーンと異なる、DAFZ企業ならではのポイントです。
指定ゾーン内または指定ゾーンからの物品の流通で、物品がその指定ゾーンを通じてUAEに輸入され、顧客がそれを再販・加工(販売目的)する場合は、顧客が本土企業であっても適格活動となり得ます(大臣決定第265号(2023年)を置き換え、2023年6月1日以降開始の課税期間に遡って適用)。電子機器・部品などをDAFZの倉庫から本土のディストリビューターに販売するモデルでは、この特例の対象かどうかが0%と9%の分かれ目になります。個別の取引が該当するかは事実関係によるため、個別の確認が必要です。
- 特例の対象は「物品」の流通。本土企業へのサービス提供は対象外
- 物品がDAFZを通じてUAEに輸入されていること、顧客が再販・加工目的であることが前提。最終消費者向け販売は対象外
- 物品の保管・出荷の記録、顧客の用途を示す証跡を残しておくことが重要
デミニミス基準と「5期ルール」
適格所得以外の収入がわずかにある程度では、QFZPの地位は失われません。基準は、AED 500万または総収入の5%のいずれか低い方です。
ただし、この基準を超えるとQFZPの地位を失い、その課税期間とその後4課税期間(合計5期)にわたり、通常の法人税率(課税所得のうちAED 375,000を超える部分に9%)が適用されます。1期の超過が5期分に響くため、期中に本土向け収入の比率をモニタリングする仕組みが欠かせません。
QFZPには小規模事業者救済(SBR)が適用されません。また、連結売上7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループに属する場合は、QFZPであってもUAEのドメスティック・ミニマム・トップアップ税(DMTT、15%)の対象となり得ます。
DAFZ企業の実務上の確認ポイント
- 取引の棚卸し:想定される売上を「フリーゾーン企業向け」「海外向け」「本土向け(物品/サービス)」に分類します。
- 指定ゾーン特例の検討:本土向けの物品販売が、再販・加工目的の顧客向けに当たるかを確認します。
- デミニミスの試算:適格所得以外の収入がAED 500万または5%以内に収まるかを、年度計画の段階で試算します。
- 実体の確保:DAFZ内のオフィス・倉庫、従業員、支出が事業規模に見合っているかを確認します。
- 会計の仕組み化:取引区分ごとに売上を集計できる勘定設計と、監査済み財務諸表の準備体制を整えます。
会社設立そのものは「①ライセンスを選ぶ」「②法人形態を選ぶ」「③オフィスを選ぶ」の3ステップで進みますが、QFZP適格性は事業内容ごとの個別判断です。設立段階から取引構造を意識しておくと、後からの手戻りを防げます。設立の流れはDAFZ実務3ステップ、設立の支援内容はDAFZ会社設立サービスをご覧ください。
よくあるご質問
DAFZに会社を設立すれば、自動的に法人税0%になりますか?
本土(メインランド)の顧客に販売すると、すぐに9%課税になりますか?
デミニミス基準を超えるとどうなりますか?
小規模事業者救済(SBR)は使えますか?
0%でも法人税の登録や申告は必要ですか?
関連記事・サービス
参照した一次情報
- 連邦法令第47号(2022年)法人税法 第18条(適格フリーゾーンパーソン)
- 内閣決定第100号(2023年)適格所得の判定(デミニミス基準)
- 大臣決定第229号(2025年)適格活動・対象外活動
- 大臣決定第73号(2023年)小規模事業者救済
- 内閣決定第75号(2023年)法人税関連の行政罰
- UAE連邦税務庁(FTA)公表資料・ガイド
- DAFZ公式サイト(登録企業数)
