QFZP(適格フリーゾーン法人)完全ガイド|DMCC企業の法人税0%の実態と注意点
「フリーゾーンは法人税0%」という言葉の実態を、QFZP(適格フリーゾーン法人)制度を軸に正確に解説します。要件、適格所得の範囲、デミニミス基準、DMTTとの関係まで、DMCC企業の事例をもとに整理しました。
フリーゾーンの「法人税0%」は、QFZP要件をすべて満たした企業の適格所得にだけ適用されます。適格所得以外の所得には9%が課され、デミニミス基準を超えると5課税期間にわたってQFZPの地位を失います。さらに連結売上EUR 7.5億以上のグループにはDMTT(15%)が別途かかり得ます。自社の取引がどの区分に入るかを設立前に整理することが、税務リスクを防ぐ鍵です。
「UAEのフリーゾーンは法人税0%」——この言葉だけが独り歩きし、実態を正確に理解しないまま進出を検討するケースを少なからず見かけます。特に大手企業・上場企業にとっては、この点の誤解が後々の税務リスクにつながりかねません。この記事では、フリーゾーン企業の税制の実態を、QFZP(Qualifying Free Zone Person)という制度を軸に、DMCC企業の事例をもとに解説します。
本記事は「海外展開を目指す企業のためのDMCC完全ガイド」の関連記事です。UAE法人税全体の仕組みは「UAE法人税の解説記事」をご覧ください。
前提:UAEにも法人税は存在する
UAEは連邦法令第47号(2022年)により法人税を導入し、2023年6月1日以降に開始する事業年度から適用されています。税率は、課税所得のうちAED 375,000以下の部分が0%、超える部分が9%です。
DMCCを含むフリーゾーン企業は、たとえ実効税率が0%であっても、法人税の登録義務は全社にあります。登録を怠るとAED 10,000の罰金が科されます。申告・納付は事業年度末から9か月以内です。
QFZP(適格フリーゾーン法人)とは何か:6つの要件
QFZPの要件を満たせば、適格所得に対して0%の法人税が適用されます。適格所得以外の課税所得には9%が課されます。QFZPと認められるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 十分な実体 | フリーゾーン内に、事業に見合った資産・従業員・支出があり、中核的な所得創出活動をフリーゾーン内で行っていること |
| 2. 適格所得の獲得 | 適格活動から所得を得ていること |
| 3. デミニミス基準 | 適格所得以外の収入が、AED 500万または総収入の5%のいずれか低い方以内であること |
| 4. 通常課税を非選択 | 9%の通常課税を自ら選択していないこと |
| 5. 移転価格 | 関連者取引を独立企業間価格で行い、文書化の要件を守っていること |
| 6. 監査済み財務諸表 | 監査を受けた財務諸表を作成・保存していること |
デミニミス基準を超えるなど要件を1つでも満たさなくなると、その課税期間とその後4課税期間(合計5期)、QFZPの地位を失い、通常の法人税率(課税所得のうちAED 375,000を超える部分に9%)が適用されます。一時的な非適格収入の増加が、長期にわたる税制優遇の喪失につながる点に注意が必要です。
「適格所得」の範囲には注意が必要
適格所得になるのは、主に次の取引から得た所得です。
- 他のフリーゾーン企業との取引(適格活動・対象外活動に該当しないもの)
- フリーゾーン企業以外との取引のうち、適格活動に該当するもの(適格商品のトレーディング、物流サービス、グループ内のヘッドクオーター・トレジャリー業務など)
- 指定ゾーン内・指定ゾーンからの物品の流通(条件あり)
DMCC企業のポイント:適格商品のトレーディング
DMCCに多いコモディティ取引は、適格活動に該当し得ます。ただし無条件ではなく、公認の商品取引所、または公認の価格報告機関(Recognised Price Reporting Agency)で価格が公表されている商品であることが条件です。2025年の改正により、対象は原形での物理的な取引に限らず、リスクヘッジのためのデリバティブ取引などにも広がりましたが、すべての取引が自動的に適格になるわけではありません。
また、本土(メインランド)顧客への販売・サービス提供は原則として非適格所得(9%課税)として扱われます。DMCC企業がUAE国内の本土企業と取引する機会が多い場合、この点を踏まえた事業設計が必要です。
2025年8月28日発行の大臣決定第229号(旧第265号を置き換え、2023年6月1日以降開始の課税期間に遡って適用)により、適格活動のリストが拡大されています。あわせて大臣決定第230号により、商品の価格根拠となる公認の価格報告機関が定められました。制度は継続的に更新されているため、最新の規定を都度確認することが重要です。
フリーゾーン別:QFZPで特に確認したい論点
QFZPの要件はどのフリーゾーンでも共通ですが、フリーゾーンごとに多い事業モデルが異なるため、確認すべき論点も変わります。
- コモディティ取引が適格商品の条件を満たすか
- 本土顧客へのサービス比率
- DMCC会社設立
- DAFZ経由で輸入した物品を本土のディストリビューターに販売する場合の特例
- DAFZ企業のQFZP要件
- JAFZA・DIFC・IFZAなど、事業モデル別に要確認
- フリーゾーン比較
指定ゾーン内または指定ゾーンからの物品の流通で、物品がその指定ゾーンを通じてUAEに輸入され、顧客がそれを再販・加工する場合は、顧客が本土企業であっても適格活動となり得ます。DAFZなど指定ゾーンの企業にとって重要な論点です。詳しくはDAFZ企業のQFZP要件をご覧ください。
大手企業が特に注意すべき「DMTT」
QFZPとは別に、DMTT(Domestic Minimum Top-up Tax/国内ミニマム課税)という制度があります。
- 適用対象:直前4事業年度のうち2事業年度以上で、グループ全体の連結売上がEUR 7.5億以上となる多国籍企業グループ
- 税率:15%
- 適用開始:2025年1月1日以降に開始する事業年度から
これは経済協力開発機構(OECD)が主導するグローバル・ミニマム課税(いわゆる「Pillar Two」)の枠組みに沿った制度です。UAE国内で0%や9%の税率が適用されていても、グループ全体の規模がこの基準に該当する企業は、UAEでの実効税率が15%に満たない場合、その差額を上乗せ税として納める必要があります。
東証プライム上場級の大企業がフリーゾーン進出を検討する場合、DMTTの影響を必ず個別に精査する必要があります。「フリーゾーンだから法人税がかからない」という単純な理解のまま進出計画を立てると、実際の税負担を見誤るリスクがあります。登録・申告の実務はUAE DMTT対応支援をご覧ください。
まとめ:フリーゾーン企業の税率の全体像
| 区分 | 対象 | 税率 |
|---|---|---|
| QFZP適格所得 | QFZP要件を満たす企業の適格所得 | 0% |
| QFZP非適格所得 | 本土向けサービス等の非適格所得 | 9% |
| 通常の法人税 | QFZP要件を満たさない場合の課税所得 | AED 375,000以下0%/超過部分9% |
| DMTT | 連結売上EUR 7.5億以上の多国籍企業グループ | 実効税率15%まで上乗せ |
「0%」という言葉の魅力だけで進出を決めるのではなく、自社の事業構造がどの区分に該当するのかを正確に把握した上で、実体要件の整備や移転価格文書の準備を進めることが、長期的に安定した税務ポジションを維持する鍵になります。
QFZPに関するよくあるご質問
QFZPとは何ですか?
フリーゾーンに会社を作れば、自動的にQFZPになりますか?
デミニミス基準とは何ですか?
QFZPでも法人税の登録・申告は必要ですか?
QFZPであればDMTT(15%)は関係ありませんか?
Biz Easyのサポートについて
当社Biz Easyは、単なる法人設立代行にとどまらず、戦略立案から会社設立、ビザ・銀行口座開設、その後の会計・税務・人事オペレーションまで「実行しきる」ことを強みとするコンサルティングファームです。Big4未満のコストで、Big4レベルの知見を提供します。
2021年の設立以来、中東・アフリカへの進出を目指す日系企業200社以上を支援してきました。会計・税務の専門チームを擁し、QFZP要件の整備からDMTTの影響分析まで、大手企業の複雑な税務論点にも対応しています。
参照した一次情報
- 連邦法令第47号(2022年)法人税法 第18条(適格フリーゾーンパーソン)
- 内閣決定第100号(2023年)適格所得の判定
- 大臣決定第229号(2025年)適格活動・対象外活動/大臣決定第230号(2025年)公認の価格報告機関
- 大臣決定第73号(2023年)小規模事業者救済
- 内閣決定第75号(2023年)法人税関連の行政罰
- UAE連邦税務庁(FTA)公表資料・フリーゾーン法人向けガイド
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