日本人がいなくても、日本ブランドは広がる〜ダイソー・無印良品に学ぶ、中東での店舗展開の型
ドバイでは、日本人のいない和食店が人気を集めています。日本の食材は取り寄せ、運営は現地やアジア出身のチームが担う。これは日本文化が世界に根づいた、好ましい姿だと思います。店舗ビジネスでも同じことが起きています。中東で成功している日本ブランドは、現地の有力パートナーと組み、日本人が常駐しなくても店を増やしています。その「型」を整理します。
中東での実績
ダイソーは海外25の国と地域に1,107店(2026年2月末)、無印良品は海外27の国と地域に757店(2025年8月末)を展開しています。そのうち中東は次のとおりです。
| ブランド | 運営形態 | 中東の店舗数 | 時点 |
|---|---|---|---|
| ダイソー | フランチャイズ(Lals Group/Damas Group。2018年の発表時点) | 6カ国93店 UAE51、サウジ14、カタール12、クウェート8、バーレーン4、オマーン4 |
2026年2月末 |
| 無印良品 | 独占フランチャイズ/ライセンス契約(Alshaya Group) | 5カ国18店 UAE8、クウェート3、サウジ3、バーレーン2、カタール2 |
2025年8月末 |
| Miniso | 国ごとの運営会社(ディストリビューター中心とみられる) | 中東の店舗数は未開示 (海外全体は3,583店) |
2025年12月末 |
出典:大創産業、良品計画、MINISO Group各社の公式発表。決算期が異なるため、時点を併記しています。
どちらも「現地の大手1社に任せるフランチャイズ型」
どちらも中東に自社の直営法人を置かず、国単位で現地の有力パートナーに運営を委ねています。運営は現地のパートナー企業の経営陣が担っています。
「日本人がいなくても」を成立させているもの
日本側が不要になるわけではありません。日本側は商品、ブランド、運営基準を供給し続けます。パートナー側は、モールの出店枠、物流、人材、会員基盤を提供します。和食店が日本の食材を取り寄せ続けるのと同じ構図です。
日本が担う価値は、人の出張から、商品とブランドの供給に変わっています。現地に日本人が常駐しなくても、本社の商品とブランドの支えは欠かせません。
本記事で解説した中東での店舗展開について、自社への影響や対応方針を確認したい場合は、 お気軽にお問い合わせください。 累計200社超の支援実績をもとに、貴社の状況に応じたアドバイスをいたします。
無印良品の教訓:パートナーの選び方が成否を分ける
無印良品は1990年代に、ロンドン(Liberty社と提携)と香港(Wing Onとの合弁)で主導権を握れず、1998年にアジアから撤退しました。その後、方針を変えています。
- 1自社が主導できる形で組む(51%以上の出資、または子会社)
- 21店舗ずつ黒字化を確認してから次を出す
- 3物件と家賃の交渉は自社で行う
2001年に香港へ単独で再進出し、これが後の中国本土の拡大につながりました。中東でフランチャイズ型を選ぶ場合も、ブランド基準、品揃え、価格に日本側の承認権を残す契約設計が欠かせません。
比較対象としてのMiniso
Minisoは中国・広州の企業で、日本風のブランディングから出発しました。2022年以降は日本的な演出を外す方針を表明しています。日本ブランドの事例ではなく、日本ブランドが学べる拡大の型として見るのが適切です。
- 規模:2025年12月末で店舗数は8,485店、海外は3,583店です。
- 海外の運営形態:約7割(2,451店)をディストリビューター(商品の所有権と在庫リスクを負う販売代理)が運営しています。直営は700店、Retail Partner型(加盟店)は432店です。
- 使い分け:海外を「直営市場」と「ディストリビューター市場」に分け、事業の進み具合に応じて国の分類を入れ替えています。
- 中東:運営会社は国ごとに異なり、サウジはAli Ahmed Algabas Trading Est.、カタールはBTC Fashionです。中東でも、国ごとの運営会社に任せる型が中心だとみられます。
ダイソーや無印と違うのは、市場の成熟に合わせて直営とディストリビューターを切り替える柔軟さです。
御社に合う型はどれか
どの型が合うかは、商品の単価、回転の速さ、ブランドの守り方で決まります。中東での事例から整理すると、次の4つの型があります。
| 型 | 事例 | 向くケース | 契約・運営の要点 |
|---|---|---|---|
| 独占フランチャイズ型 (国単位でパートナー1社) |
ダイソー×Lals/Damas、無印良品×Alshaya | 中東に人と資本を割けない。モール中心の物販 | 国別テリトリー、最低出店数、ブランド基準の承認権 |
| ディストリビューター・商品供給型 | Minisoの海外(約7割)、無印のライセンスドストア | 製造・調達力が強い。まず売れるかを試したい | 価格逸脱の禁止、再委託の禁止、競業避止 |
| 直営+現地人材型 (のちに切替も可) |
無印の香港・中国、Minisoの直営(海外700店) | 長期で利益を取りたい。ブランド体験を厳密に守りたい | 出資比率、1店舗ずつの黒字化、物件交渉を自社で行う |
| 加盟店を広く募る型 | Minisoの中国本土(Retail Partner型) | 標準化が進み、小さく多店舗化できる業態 | 中東での採用例は確認できていない |
成功した国でフランチャイズから直営や合弁へ切り替える選択肢を、契約に残しておく設計も有効です。
出典(時点): 大創産業 世界に広がるダイソーの店舗展開(2026年2月末)/ Daiso Japan プレスリリース(2018年1月)/ 良品計画 Corporate Profile(2025年8月末)/ M.H. Alshaya 発表(2013年1月)/ MINISO Group 決算発表(2026年3月31日)
中東で成功している日本ブランドの多くは、現地の有力パートナーに運営を委ねるフランチャイズ型です。ダイソーはGCC6カ国93店、無印良品は中東5カ国18店。日本側の価値は、人の出張から商品とブランドの供給に変わっています。ただし、主導権を手放さない契約設計が前提です。どの型が合うかは、商品の単価、回転の速さ、ブランドの守り方で決まります。
