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DOING BUSINESS FROM DUBAI | 日系企業のビジネス展開事例 Vol.2

従業員わずか4名。100年企業PILLARが、パートナー商売の中東・アフリカ・中央アジアでオイル・ガス市場を切り拓く理由

PILLAR Seal Solutions Middle East FZCO 畑中 宏二 氏(代表者)

Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ(2026年9月2日)より
現地法人設立
2013年8月
所在地
DAFZ(ドバイエアポートフリーゾーン)
体制
現地4名体制+アルジェリア駐在事務所
カバーエリア
中東・アフリカ・中央アジア

株式会社PILLARは1924年、大阪で創業した流体制御機器メーカーだ。東京証券取引所プライム市場に上場し、2025年度の連結売上高は594億79百万円、2026年度は前年比140%となる830億円を見込む。半導体・液晶関連の電子機器事業と、オイル・ガス/エネルギー分野向けのメカニカルシールを扱う産業機器事業を両輪に、グループ1,308名を擁するこの100年企業の中東・アフリカ・中央アジア展開を担うのが、DAFZに拠点を置くPILLAR Seal Solutions Middle East FZCOだ。2026年9月2日、Dubai Airport Freezone(DAFZ)とBiz Easyの共催で開催されたウェビナー「Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ」の対談パートに、現地法人代表の畑中宏二氏が登壇。従業員わずか4名という体制でどう広域をカバーしているのか、そして「パートナー商売」と言い切る中東・アフリカ・中央アジアビジネスのリアルについて語った。

3分でわかる本記事の要点

  • なぜ「4名」で中東・アフリカ・中央アジアを回せるのか ― 会社登録からビザ、銀行口座開設まで、フリーゾーンの実務対応力に支えられたワンストップ運営の仕組み
  • 「中東・アフリカ・中央アジアは基本、パートナー商売」という現場の鉄則 ― 支払い能力・エンドユーザーとの関係・業界知識・コンプライアンス、有能なパートナーを見極める視点
  • 技術と人間関係、両輪で拠点を育てる ― 日本人技術者による橋渡し、現地エンジニアの自前育成、そして「来てみないとわからない」現地の人間関係の重さ
畑中宏二氏
畑中 宏二 氏
PILLAR Seal Solutions Middle East FZCO 代表者

01従業員4名でも回る理由 ― フリーゾーンという「外部エンジン」の使い方

PILLAR Seal Solutions Middle East FZCOは2013年8月、ドバイエアポートフリーゾーン(DAFZ)に設立された。担当エリアは中東・アフリカに加え、中央アジアまで含む広域だ。この規模の商圏を、現地体制はわずか4名で担っている。

中東、アフリカ、あと中央アジアといった広域をエリア担当しています。金融、つまり代金回収や送金の観点、そして貿易の中心地であるという点、地の利という観点から、ドバイが最適だと判断しました。

ではなぜDAFZだったのか。畑中氏が挙げた決め手は、フリーゾーンとしての実務対応力の高さだ。会社登録、ビザの取得、銀行口座の開設といった、進出時に必ずつまずくポイントが「比較的コントロールしやすい」こと。加えて空港に近い立地の良さが、ネットワーキングの構築や生きた情報収集のしやすさにつながっているという。

我々、従業員4名という小世帯でありながら、経理や人事、物流など、比較的第三者の力を借りながらオペレーションが可能ということで、ワンストップソリューションのような形ができる。それが主な理由です。

自社ですべてを抱え込まず、フリーゾーンの制度と周辺サービスを「外部エンジン」として使いこなす。少人数体制で広域をカバーするPILLARの拠点運営は、身の丈に合わせた進出モデルの一つの解と言えそうだ。

02「中東・アフリカ・中央アジアは基本、パートナー商売」 ― 技術力と人間関係、両輪の拠点づくり

製造業がBtoBで中東・アフリカ・中央アジア市場に根を張るうえで、畑中氏が繰り返し強調したのが「パートナー」の存在だ。

この地域は基本的にパートナー商売です。有能なパートナーをいかに見つけ、見極めるか。支払い能力があるか、エンドユーザーとの人間関係を持っているか、業界をよく知っているか、コンプライアンスは大丈夫か。そうした人間関係を深め、広げ、繋げていくことで、お客様の近くにいればいるほど良いという発想に近づいていきます。

もう一つの軸が、日本の技術力と現地サポートの両立だ。PILLARが扱うメカニカルシールは、オイル・ガスやエネルギー分野向けのニッチな技術製品であり、納入後のメンテナンスや交換対応の質がそのまま信頼につながる。

この10年は日本人の技術者を投入し、お客様と本社をつなぐ役割を担ってきました。日本や日本人が好きで、技術力を評価し、尊敬の念を持って接してくださるお客様が多い地域です。そのご期待に応えるためにも、現地の技術者やサービスマンの人材育成を進め、将来を見据えて自前で育てた人材を現地に投入していきたいと考えています。

コミュニケーション力という課題には、駐在歴の長い人材がフォローに入る体制でカバーしているという。技術力への信頼を土台にしながら、それを支える人間関係とローカル人材の育成に長期で投資する ― この二本立てが、PILLARの拠点が10年以上にわたって事業を伸ばしてきた背景にある。

03いま力を入れる国・地域 ― 「交換需要」の深耕と、新たな一手

PILLARのビジネスは、プラントに納入した製品のアフターサービス、つまり交換需要が主流だという。この特性を踏まえ、注力エリアには明確な優先順位がある。

実績のあるアルジェリアとサウジアラビアに、いま特に力を入れています。サウジは戦争の影響で動きがスローダウンしていますが、既存の導入品の交換需要の頻度を上げつつ、この十年ほど停滞している新規導入をドバイ発信でもう一度築き上げていくことが私のミッションです。
方針対象・内容位置づけ
既存実績の深耕アルジェリア/サウジアラビア交換需要の頻度・確度を上げ、停滞していた新規導入を再構築
新分野への展開カーボンニュートラル関連製品/半導体向け(UAE中心)/透析医療などの医療ビジネス日本市場中心でまだ中東・アフリカ・中央アジアに未導入の商品を投入

さらに畑中氏は、今年10月にドバイで開催されるエネルギー展示会「WETEX」に、パートナーのブースを間借りする形で出展する計画も明かした。既存の強みを固めながら、新市場・新商品への布石も並行して打つ ― 空白国開拓と新市場創出、新商品投入を掛け合わせるという、PILLARが掲げる方針そのものだ。

04赴任前後のギャップ ― 「来てみないとわからない」現地の人間関係

畑中氏は転職組で、前職から数えて9年ほどドバイに在住している。現場で実感した最大のギャップは何か。

人と人のつながりが、日本よりもずっと重視される地域です。これは誰に説明してもわからないもので、やはり来てみないとわからない。前職はコンシューマービジネスで、いまはB2Bの業界にいますが、人との接し方はまったく同じです。それを肌で知っていることが、私の強みだと考えています。

BtoCからBtoBへ、業界は変わっても、人との向き合い方という土台は変わらない ― 畑中氏のこの言葉は、業種を問わず中東・アフリカ・中央アジア進出を検討する日系企業にとって、拠点責任者に求められる資質を端的に示しているのではないだろうか。

05追加Q&A ― 情勢の変化と、この先の展望

当日は時間が限られていたため、日系企業にとって特に重要と考えられる2点について、別途畑中氏に伺った。

1)中東情勢への対応について

イラン情勢をはじめ、中東地域では緊張が続く局面が繰り返されている。こうした情勢の変化に、PILLARはどう向き合っているのか。

私たちの製品・サービスは、ライフラインに直結するビジネスです。停滞することはあっても、止まることはありません。お客様の近くにいればいるほど良いという信念のもと、平時以上に「寄り添うこと」と「スピード感」を大切にしています。

情勢がどれだけ変化しても現場から離れないというこの姿勢は、これまで畑中氏が語ってきた「パートナー商売」「現地の人間関係」を重視する哲学とも一貫している。

2)PILLARの今後のビジョンについて

中東・アフリカでの事業を、PILLARは今後どのように広げていきたいと考えているのか。注力領域と中期的な方向性を尋ねた。

当社の主力製品群は、アフターサービスまで含めたソリューション事業として展開できるため、この地域は全社的に中長期の事業拡大が期待されるマーケットです。オイル・ガスや電力の需要があるGCC、北アフリカ、中央アジアなど、地政学リスクも踏まえたうえで、あえて幅広い領域に注力しています。また、まだ海外展開していない製品も数多くあり、それらを武器にアフリカ・サブサハラ地域を攻略することも、活動が制限される今だからこそ、動き出したいと考えています。

「制約があるからこそ動く」という逆張りの発想は、少人数体制で広域をカバーしてきたPILLARの拠点運営の哲学そのものだ。地政学リスクを避けるのではなく織り込んだうえで、あえて手薄な市場に踏み込んでいく姿勢は、この地域で長く事業を続けてきた企業ならではの視点と言えるだろう。

Biz Easyより
PILLARのように、少人数体制でニッチな技術製品を中東・アフリカ・中央アジアに展開する日系企業は少なくありません。ポイントは、フリーゾーンの実務支援を最大限に活用しながら、限られた人員を「パートナー開拓」と「技術サポート」という付加価値の高い業務に集中させることです。10月のWETEXのような業界展示会への出展タイミングの見極めも、新規市場開拓の重要な一手になります。中東・アフリカ・中央アジア進出を検討されている製造業の皆様は、自社の体制規模に合わせた進出モデルの設計について、ぜひ一度ご相談ください。

06PILLARの実例から学ぶ、「少数精鋭」で中東・アフリカ・中央アジアを制するヒント

  • フリーゾーンの実務対応力を「外部エンジン」として使い、少人数でも広域運営を実現するモデル
    → Biz Easyなら、会社登録・ビザ・銀行口座開設といった立ち上げ実務から、経理・人事のアウトソース設計まで、少人数体制を前提とした運営スキームを構築できます。
  • 「パートナー商売」が前提の中東・アフリカ・中央アジア市場で、有能なパートナーを見極め、関係を構築していく必要性
    → Biz Easyは現地の商流・パートナー候補の調査から、コンプライアンスチェック、契約面での支援まで一気通貫でサポートできます。実際に現地の業界専門家へのエキスパートインタビューを実施した実績もあり、パートナー候補の実態把握や業界動向の見極めにも対応可能です。
  • 技術力への信頼を維持するための、現地人材の長期的な育成という経営課題
    → 採用計画の設計から人事評価制度の構築まで、現地エンジニア・サービス人材の定着を見据えたHR支援で伴走できます。

中東・アフリカ・中央アジア進出は、必ずしも大規模な人員投入を前提にする必要はない。PILLARの事例は、フリーゾーンの実務支援を活かしながら、限られたリソースを「人間関係構築」という最も付加価値の高い仕事に集中させることの重要性を示している。

中東・アフリカ・中央アジア進出、御社の場合は?

PILLARのように少人数体制で中東・アフリカ・中央アジア市場に挑む日系企業にとって求められるのは、限られたリソースをどこに集中させるかという設計と、現地パートナーとの関係構築を後押しする実務支援です。Biz Easyでは、法人設立やビザ手続きといった制度対応にとどまらず、パートナー開拓、人事制度設計、現地オペレーションの立ち上げまで、実務伴走型でご支援しています。

製造業の中東進出を相談する
出典:「Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ」(2026年9月2日開催/共催:Dubai Airport Freezone(DAFZ)× Biz Easy)対談パートでの発言をもとに構成。掲載内容は登壇者ご本人の確認を得た範囲で公開しています。

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