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DOING BUSINESS FROM DUBAI | 日系企業のビジネス展開事例 Vol.1

ドバイから80カ国以上を支援 ― エプソンが見た中東・アフリカの成長ポテンシャル

Epson Middle East FZCO 立森 亮 氏(Vice President, Business Operations)

Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ(2026年9月2日)より
拠点設立
2017年支店 → 2023年8月 地域統括法人化
所在地
DAFZ(ドバイエアポートフリーゾーン)
従業員数
約130名
統括エリア
中東・アフリカ・中央アジア・トルコ 80カ国以上

セイコーエプソン株式会社は1942年、長野県諏訪市で時計製造メーカーとして創業し、現在はプリンティング、ビジュアル&ライフスタイル等関連の商品・サービスをベースにしたソリューションを世界各地に届けるグローバルテクノロジー企業へと進化した。2025年度の連結売上高は1兆4,133億円、2026年3月31日時点の従業員数は74,619名。中東・アフリカ・中央アジア/西アジア・トルコにおける事業は、DAFZ(ドバイエアポートフリーゾーン)に本社を置くEpson Middle East FZCOが統括している。

2026年9月2日、Dubai Airport Freezone(DAFZ)とBiz Easyの共催で開催されたウェビナー「Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ」にて、Epson Middle East FZCO Vice President, Business Operationsの立森亮氏が登壇。同社の地域における成長の軌跡、ドバイを地域統括拠点として設立した経緯、そして80カ国以上の顧客・パートナーを支援する中で得た学びについて語った。

現在、Epson Middle Eastは、中東・アフリカ・中央アジア・トルコという極めて多様性に富む地域全体で、顧客・チャネルパートナー・事業運営を支える戦略的拠点としての役割を担っている。2017年のドバイ支店開設以来、組織は大きく成長しており、エプソンの長期的なグローバル戦略における同地域の重要性の高まりを映し出している。

3分でわかる本記事の要点

  • なぜ顧客に近い場所での意思決定が成長を加速させるのか: 支店から地域統括拠点への転換が、いかに機動力を高め、多様な市場での成長を支えたか
  • 地域組織を成功裏に拡大するために必要なこと: 人材・オペレーション体制・インフラ・組織設計が、持続的な地域拡大を支える重要な要素である理由
  • 多様な市場で成長のバランスを取る、成功する組織のあり方: 市場の優先順位づけ、多文化リーダーシップ、長期的な投資が、80カ国以上にわたる事業成長をどう支えるか
立森亮氏
立森 亮 氏
Epson Middle East FZCO Vice President, Business Operations

01欧州主導の体制から、ドバイでのより迅速な意思決定へ

エプソンが中東・アフリカに最初に進出したのは2017年、欧州地域統括拠点の管轄下にあるドバイ支店としてだった。大きな転機となったのは2023年8月、より広域を担う地域統括拠点としてEpson Middle East FZCOが設立されたことだ。

やはり中東、アフリカ地域。将来の市場の大きさ、発展性含めて、非常に大きなポテンシャルを持ってる。そうしたお客様にしっかりと価値を届けていきたいという思いのもとに、2023年に新しくドバイに地域統括の会社としてエプソンミドルイーストを設立した。

立森氏によれば、ドバイを地域統括拠点として選んだ決め手は3つあったという。

第一に、高い成長性を持つ市場への近さだ。顧客・パートナーとより密接に関わり、現地の市場ニーズにより効果的に対応できる。第二に、多様で高いスキルを備えた人材プールへのアクセス。第三に、ドバイの整備されたロジスティクス・インフラネットワークで、効率的な地域運営を支えている。さらに、国際的な航空ハブとしての位置づけも、地理的に広範な地域全体への接続性をもたらしている。

2023年のEpson Middle East FZCO設立は、大きな組織改革の節目でもあった。エプソンは、欧州の地域体制下にあるドバイ支店から、ドバイに本社を置き日本本社に直接レポートする地域統括販売会社へと移行した。これにより、顧客・パートナーに近い場所での意思決定が可能になり、地域としての説明責任が強化され、ドバイは中東・アフリカ・中央アジア・トルコにおけるエプソンの事業の戦略的拠点として位置づけられた。

DAFZを選んだ背景には、2017年以来のフリーゾーンでの実績もある。立森氏は、DAFZのサポートが事業継続性・組織の成長・今後の地域拡大の土台づくりを後押ししてきたと述べた。

02事業規模の拡大:約20名から130名へ

2017年にドバイ支店を開設した当時、体制は約20名だった。2023年に地域統括拠点となるにあたり、オフィス・採用・ビザ発給にわたる急速な拡大が必要となり、同時に、成長する地域組織を支える体制づくりも求められた。

ビザ発給を含む採用プロセスは、想定以上にハードルの高い実務だったと立森氏は振り返る。それでも拡大は大きな遅れなく進んだといい、その要因としてDAFZの対応姿勢を挙げている。

私たちの要望をしっかりと受け止めていただき、迅速なサポートとリーダーシップを発揮していただいたおかげで、事業に支障なく拡大を進めることができました。DAFZを選んでよかったと、非常にありがたく感じています。

人員拡大にとどまらず、エプソンは営業・マーケティング・オペレーション・カスタマーサポート・事業管理といった各機能の能力構築にも注力し、顧客・チャネルパートナーが地域全体で一貫したサポートを受けられる体制を整えてきた。

採用、ビザ、オフィス拡張といった運営面の土台は、地域拡大のスピードと成否に直接影響する。複数市場にまたがって事業を拡大する組織にとって、こうした基盤づくりは事業継続性・顧客対応力・長期的な拡大を支えるものとなる。

0380カ国での優先順位づけ:多様な市場への投資バランス

80カ国以上に事業を展開するエプソンは、市場の優先順位づけに体系立てたアプローチを採っている。すべての市場に均等にリソースを配分するのではなく、市場の成熟度、顧客需要、デジタルトランスフォーメーションの動向、インフラの整備状況、長期的な成長性といった要素をもとに機会を評価している。

この地域は規模も多様性も非常に大きいため、戦略的な優先順位づけが欠かせません。当面注力しているのは、サウジアラビア、UAE、南アフリカ、トルコ、モロッコといった、需要と市場の成熟度がすでに高い市場です。同時に、セネガル、タンザニア、ケニアといった、中長期的に大きな成長機会が見込まれる新興市場についても注視しています。
優先度対象国・地域位置づけ
第一ターゲットサウジアラビア/UAE/南アフリカ/トルコ/モロッコ既にビジネスが発展している市場
次のターゲットセネガル/タンザニア/ケニア今後の発展性を見据えて力を入れる市場

顧客ニーズへの対応を維持しながら持続的な成長を支える、バランスの取れた戦略といえる。

0440カ国籍以上のマネジメント:多文化組織づくり

採用という実務面のハードルに加え、立森氏が「今も向き合い続けている」と語るのが、真に多国籍な組織のマネジメントだ。

実際、例えば社員の国籍で言うと、ドバイだけでも30か国の国籍の方がいらっしゃいますし、エプソン ミドルイースト(META-CWA)全体で行くと40カ国籍以上の国籍の方がいます。それぞれの方の思いをくみ取り、エプソンとしての価値観というところをしっかりと伝えた上で、自律的に動けるような組織づくり、文化づくりがとても大変でした。それは今でも随時苦労しながらやっている状況です。

エプソンの拡大に伴い、統一された企業文化を築きながら市場ごとの意思決定を可能にすることが、戦略上の重要課題となっている。多様な人材構成の中でこれを実現するには、コミュニケーション・リーダーシップ育成・インクルージョンへの継続的な注力が求められる。

エプソンにとって、この多様性は競争力の源泉でもある。幅広い視点をもたらし、現地市場への理解を深め、組織全体でより的確な意思決定を支えている。

05追加Q&A ― 変化への対応と、この先の展望

当日は時間が限られていたため、日系企業にとって特に重要と考えられる2点について、別途立森氏に伺った。

1)地政学リスクへの対応について

想定していなかった事態が起きたとき、地域統括拠点はどう向き合うのか。この点について、立森氏に直接尋ねた。

地域統括拠点としてドバイに投資を行ってきた経緯を踏まえると、拠点そのものを移転するという判断は現実的ではありません。情勢が不安定になった局面では、一部の物流ルートに影響が生じ、必要に応じて特定のオペレーションの見直しや代替拠点の活用を行いました。地域における厚みのある人材、確立されたマネジメント体制、そして運用面での柔軟性に支えられ、事業継続性と顧客サポートを維持することができました。この経験は、今後の課題に対するレジリエンスと備えを、結果としてより強固なものにしたと感じています。

エプソンにとってドバイは、長期的な戦略的コミットメントを意味する。地政学的な混乱によって戦術的な調整が必要になることはあっても、地域戦略の軸は、顧客サポート・成長・事業継続性に置かれたままだ。今回の経験は、長期目標を損なうことなく適応できる強靭な運営モデルの重要性を、改めて浮き彫りにした。

2)エプソンの今後のビジョンについて

エプソンの地域戦略は、グループ全体の長期ビジョンと密接に連動している。対談の中で立森氏は、同社のグローバルな重点方針が、中東・アフリカ・中央アジアにおける今後の成長と価値創出の枠組みとなっていることに触れた。

今年4月に、2035年に向けた長期ビジョン「Engineered Future 2035」を策定しました。この10年間で価値を創出していくための指針で、エネルギー、AIを含む先端技術、労働力不足への対応、教育という4つの戦略的重点分野を軸としています。これらの重点分野は、中東・アフリカ・中央アジアが求める、より効率的で、誰もが恩恵を受けられる、持続可能なソリューションへのニーズと密接に重なっています。私たちの使命は、このグローバルなビジョンを、地域の顧客やコミュニティにとって実践的な価値へと転換していくことです。

エプソンの重点分野は、教育・生産性・デジタルトランスフォーメーションといった地域の志向と密接に重なっている。地域統括拠点は、エプソンのグローバルビジョンを、中東・アフリカ・中央アジアの多様な市場ニーズに即した現地戦略・ソリューションへと落とし込む役割を担っている。

この地域は、経済発展、人口動態の変化、デジタルトランスフォーメーション、そして革新的テクノロジーへの需要拡大に支えられた、エプソンの長期成長戦略における重要な位置を占めている。こうした機会は、継続的な投資、現地パートナーシップ、そして地域全体での持続的な成長へのエプソンのコミットメントを、改めて後押しするものとなっている。

Biz Easyより
エプソンのドバイでの存在感は、地域統括拠点にとどまらない。イノベーションセンターを通じて、顧客・パートナーは同社の最新技術を直接体感することができ、地域全体でのより緊密な連携と市場との関わりを後押ししている。エプソンは、顧客が長期的な価値を実現するために必要な専門知識・サービス・技術サポートを受けられるよう、現地サポート体制の強化も進めている。こうした顧客中心のアプローチは、イノベーション・現地理解・オペレーションの卓越性を組み合わせ、80カ国以上にわたる持続的な成長を支えている。

06エプソンの地域成長の軌跡が示す、成功する地域統括拠点のつくり方

  • 学び1:顧客に近い場所で意思決定する
    地域統括拠点の設立により、多様性に富む地域全体で、より迅速な意思決定と深い市場理解が可能になった。
  • 学び2:早い段階から人材と組織能力に投資する
    約20名から130名規模への拡大には、人材・オペレーション能力・組織構造への長期的な投資が必要だった。
  • 学び3:戦略的に優先順位をつける
    80カ国以上での成功には、規律ある市場の優先順位づけと、リソースの慎重な配分が求められる。
  • 学び4:レジリエントな多文化チームを築く
    40カ国籍以上で構成される組織を率いるには、文化・コミュニケーション・リーダーシップへの継続的な投資が欠かせない。
  • 学び5:長期的な視点を持つ
    支店から地域統括拠点への移行は、短期的な機会だけでなく、将来の成長を見据えた組織づくりの重要性を示している。

支店運営から地域統括拠点への進化は、組織構造を市場機会に合わせていくことの重要性を映し出している。顧客に近い場所での意思決定、人材・組織能力への投資、そして長期的な視点の維持を通じて、エプソンは多様性に富むこの地域全体で顧客・パートナーを支えるプラットフォームを築いてきた。中東・アフリカ・中央アジア・トルコの市場が今後も変化し続ける中、同社の経験は、ドバイを拠点とした地域展開を検討する組織にとって、貴重な示唆を与えている。

中東・アフリカ進出、御社の場合は?

エプソンのような大規模展開に限らず、いま中東・アフリカ市場で勝負する日系企業に求められるのは、現地ガバナンスの設計と、実務実行のスピードです。Biz Easyでは、法人設立やビザ手続きといった制度対応にとどまらず、組織づくり・人事制度設計・現地オペレーションの立ち上げまで、実務伴走型でご支援しています。

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出典:「Promoting Japanese Corporate Entry into DAFZ」(2026年9月2日開催/共催:Dubai Airport Freezone(DAFZ)× Biz Easy)対談パートでの発言をもとに構成。掲載内容は登壇者ご本人の確認を得た範囲で公開しています。
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