UAE法人税(CT)は2023年6月1日に施行され、課税所得AED375,000を超える部分に対し9%の税率を適用しています。フリーゾーン企業はQFZPステータスの取得により適格所得に0%の税率を維持できますが、要件は年々厳格化しています。2026年は罰則改革(非複利化)、中小企業救済措置の失効、ユニラテラルAPA制度の新設、ESR単独申告義務の廃止といった制度が大きく動く転換期となります。
本ガイドは、UAE法人税の最新制度、フリーゾーン企業の税務対応、2026年の重要変更点、そして日系企業が実行すべき5つの対応ステップを、事例と実務ポイントを交えて解説します。
エグゼクティブサマリー
- UAE法人税(CT)は2023年6月1日施行。課税所得AED375,000超に対し9%の税率を適用
- フリーゾーン企業はQFZPステータスにより適格所得に0%税率を維持可能。ただし要件は年々厳格化
- 2026年は罰則改革・中小企業救済の失効・APA新設・ESR廃止と、制度が大きく動く転換期
UAE法人税制度の概要
UAE法人税(Corporate Tax: CT)は、Federal Decree-Law No. 47 of 2022に基づき2023年6月1日以降開始の会計年度から施行されました。UAE全土の法人(メインランド企業・フリーゾーン企業を含む)に対して適用される統一税制です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2023年6月1日以降開始の会計年度から適用 |
| 法的根拠 | Federal Decree-Law No. 47 of 2022 |
| 管轄当局 | Federal Tax Authority(FTA) |
| 税率 第1段階 | 課税所得 AED 375,000以下 → 0% |
| 税率 第2段階 | 課税所得 AED 375,000超 → 9% |
| フリーゾーン適格者 | QFZP認定の適格所得 → 0% |
AED375,000(約1,500万円)の免税枠は2026年時点でも変更なし。この基準額は将来の制度改正まで据え置かれる予定です。
課税対象者と免税対象者
課税対象者
UAE域内で経済活動を行うすべての法人が課税対象です。ただし、課税所得がAED375,000以下の場合は0%の税率となります。
- メインランド企業(一般的な法人)
- フリーゾーン企業(QFZP認定を受けていない場合)
- 支店・駐在事務所(UAE域内に営業活動がある場合)
- パートナーシップ・組合(法人格を有する場合)
免税対象者
以下の法人は法人税が完全に免除されます。
| 免税カテゴリ | 条件 |
|---|---|
| 政府機関 | UAE連邦・首長国政府及びその傘下機関 |
| 慈善団体 | 公認の慈善・宗教目的の非営利団体 |
| 金融機関(一部) | 中央銀行、政府系金融機関 |
| 国際機関 | 国連機関、国際条約に基づく機関 |
| 定年退職基金 | 従業員定年退職基金(EOSB) |
| フリーゾーン(QFZP) | QFZP認定企業の適格所得 |
メインランド企業の法人税
メインランド企業(一般的なUAE法人)の課税所得は、会計帳簿に記録された利益に対して、法令で認められた調整を加えることで計算されます。多くの調整項目は保守的な判断に基づいており、実際に支払った費用であっても税務上は認められないケースがあります。
課税所得の計算
以下は主要な調整項目です。
| 主要調整項目 | 取扱い |
|---|---|
| エンターテイメント・接待費 | 50%損金不算入。残りの50%のみ損金として認定 |
| 関連者への利息 | EBITDA比率30%を上限に損金算入。超過分は認められない |
| 税務上の損失繰越 | 前年度以前の損失の75%まで繰越可能。25%は毎年消滅 |
| 関連者取引 | 独立企業間価格(Arm's Length Price)で計算。移転価格規則が適用 |
| 配当金 | UAE企業からの受け取り配当は全額損金対象外 |
フリーゾーン企業の法人税(QFZP詳解)
フリーゾーン企業のうち、Qualified Free Zone Person(QFZP)の認定を受けた企業は、適格所得に対して0%の法人税率を享受できます。QFZP是認は自動的ではなく、厳格な要件を満たす必要があり、年間を通じて継続的なコンプライアンスが求められます。
5-1. QFZP適格要件
QFZP認定を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- フリーゾーン業務の実施:フリーゾーン内で実質的な営業活動を行うこと。単なる名義上の設立では認められません。
- 従業員及びオフィスの実在:フリーゾーン内に従業員とオフィスを保有し、実在の営業拠点を維持すること。
- 適格活動の実施:FTAが認定した適格活動(製造、卸売、物流、専門サービスなど)を主要業務とすること。
- 帳簿・記録の保持:UAE会計基準に準拠した詳細な帳簿・記録をフリーゾーン内で保管すること。
- 年間申告書の提出:税務申告書及びQFZP適格性の宣明書をFTAに提出し、継続的なステータス維持を申告すること。
5-2. 適格所得の分類
QFZP企業の所得は「適格所得」と「非適格所得」に分類され、異なる税率が適用されます。
| 所得の種類 | 具体例 | 税率 |
|---|---|---|
| 適格所得 | QFZP認定活動(製造、輸出、物流)から生じた所得 | 0% |
| 非適格所得 | メインランド企業への直接サービス提供、不動産賃貸、金融所得 | 9% |
| 混合所得 | 適格・非適格両方の活動から生じた所得(按分計算が必要) | 案分比率 |
| 国外源泉所得 | UAE域外での投資所得、ロイヤリティ受取 | 0% |
メインランド企業への直接サービス提供は非適格所得として扱われ、9%の法人税が課税されます。フリーゾーン企業がメインランド顧客向けサービスを提供する場合、所得の分離計算が必須です。
5-3. 適格活動 vs. 除外活動
FTAが認定した適格活動は、製造業、卸売業・流通業、物流・倉庫業、専門技術サービス、研究開発など、実質的な価値創造を伴う活動です。一方、単なる管理機能(グループ企業の持株会社化、ペーパーカンパニー的な運営)は除外され、QFZP認定が取り消される可能性があります。
5-4. デミニミスルール(5% / AED500万)
QFZP企業が非適格所得を産出した場合、その非適格所得の割合が総所得の5%以下(かつAED500万以下)であれば、全体を適格所得として扱い、0%の税率を維持できる「デミニミスルール」があります。
年間総所得AED2,000万のQFZP企業がある。適格所得AED1,950万、非適格所得AED50万(2.5%)である場合、5%の閾値以下のため、全体をQFZP適格として0%税率を適用できます。
ただし、非適格所得がAED500万を超える場合は、この特例は適用されません。また、2026年以降、FTAがこの基準をAED300万に引き下げる可能性も検討されています。
5-5. 失格時の4年間クーリングオフ
QFZP認定を失った(又は取り消された)企業は、その後4年間はQFZP再申請資格がありません。この「クーリングオフ期間」中は、9%の法人税が全面適用されます。失格の主要原因は、適格活動の廃止、フリーゾーン内での実質的営業活動の停止、帳簿・記録の不備などです。
2026年の制度変更
2026年はUAE法人税制度の大きな転換期です。罰則制度の抜本改革、中小企業救済措置の失効、新たな移転価格制度の導入、そして国際的な租税回避防止ルールの段階的導入が予定されています。
6-1. 罰則制度の抜本改革(2026年4月14日施行)
FTAは従来の複利方式の罰則計算を廃止し、2026年4月14日以降は「罰則の非複利化」を適用します。これまで複利で累積していた罰則が、単利計算に統一されることで、特に多年度の未納・申告遅延企業の罰則額が大幅に軽減される見通しです。
具体的には、従来は遅延ペナルティが毎月複利で加算されてきましたが、今後は基本罰則額 + 月単位の単純加算となります。
6-2. 中小企業救済措置の失効(AED300万基準)
これまで課税所得AED300万以下の中小企業に対して、法人税申告書提出期限の自動延長(従来3ヶ月 → 6ヶ月)などの優遇措置がありました。この救済措置は2026年12月31日に失効し、以降はすべての企業に統一的な期限が適用されます。
2026年末までに中小企業救済措置を受けていた企業は、2027年度からは一般的な3ヶ月の申告期限が厳格に適用されることになります。早急な事務体制の整備が必須です。
6-3. 移転価格:ユニラテラルAPA制度の新設(2026年1月)
FTAは2026年1月よりユニラテラルAPA(Advance Pricing Agreement)の制度を正式に開始しました。これまでのバイラテラル(2国間)協議に加え、UAE企業が単独でFTAと価格設定の事前合意を結べるようになります。
グループ企業間での関連者取引(例:日系親会社とUAE子会社間の製品販売、技術ロイヤリティ支払い)がある場合、ユニラテラルAPA申請により、事前に価格の妥当性を税務当局と確認でき、後からの移転価格調査リスクを回避できます。
6-4. DMTT / Pillar 2:猶予期間
OECD Pillar 2グローバル最低税制度(Global Minimum Tax, DMTT)により、グローバルで15%の最低有効税率が導入されます。UAEは現在、「猶予措置国」として扱われており、2026年から2027年にかけての導入準備期間が設けられています。
多国籍企業グループ(年間売上USD7.5億以上)に属する日系企業は、国別ルール報告書(Country-by-Country Reporting)の整備と、所得包含ルール(DMTT)の計算が必要になります。
6-5. ESR単独申告義務の廃止
従来、外国パートナーを有する法人は、Economic Substance Report(ESR)の単独提出が求められていました。この要件は2026年に廃止され、法人税申告書に経済実質に関する情報を一括記載する方式に統一されます。
登録期限・申告スケジュール
UAE法人税の申告・登録には厳格な期限が設けられており、期限を超えた場合は罰則が適用されます。特に2026年4月14日以降の罰則改革を踏まえ、早期の対応が重要です。
| 手続き | 期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人税登録 | ライセンス発行から3ヶ月以内 | 超過時:AED10,000の罰金。2026年以降は厳格化 |
| 法人税申告書提出 | 会計年度終了日から4ヶ月以内 | QFZP企業は QFZP宣明書を別途添付 |
| 法人税納付 | 申告書提出日から14日以内 | E-Invoicing導入により自動計算される見通し |
| 移転価格文書の提出 | 申告書提出時、又はFTA要求時 | APA申請の場合は別途スケジュール |
日本の親会社が3月決算の場合、UAE子会社は通常12月決算(カレンダーイヤー)とされます。この場合、日本の決算期(3月)と異なるため、グループ全体の税務申告スケジュール管理に注意が必要です。また、UAE子会社の4ヶ月申告期限は4月末となり、日本の親会社申告期限(5月末)より早いため、連結税務処理の調整時間が限定されます。
罰則の詳細
UAE法人税における罰則は多岐にわたり、違反内容に応じて異なる計算方式が適用されます。2026年4月14日以降は罰則の非複利化が適用されるため、被る罰則額が軽減される可能性があります。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 法人税登録期限超過 | AED10,000の一括罰金 |
| 法人税申告書遅延提出 | 納付税額の5% + 月単位で0.5%加算(2026年4月14日以降は非複利) |
| 虚偽申告・脱税 | 脱税額の50~100% + 追徴税 + 刑事罰の可能性 |
| 会計帳簿不備・廃棄 | AED50,000~500,000の罰金範囲内 |
| 移転価格文書未作成 | AED100,000~1,000,000の罰金(最大調整額の15%) |
| QFZP失格後の不正表示 | 罰金 + 遡及的な9%税率適用(4年間) |
2026年4月14日以降、従来の複利罰則は廃止されます。例えば、24ヶ月間の申告遅延の場合、従来は月5%が複利で累積していたものが、今後は基本罰則額 + 24ヶ月分の月単位加算(0.5%)になります。この変更により、既に高額な罰則が課せられている企業においても、軽減協議の余地が生じる可能性があります。
日系企業の実務対応5ステップ
UAE法人税のコンプライアンスを確実にするため、日系企業が実行すべき5つの対応ステップを以下に示します。各ステップは独立していますが、全体としては相互に補強し合う構造になっています。
- 1 法人税登録ステータスの確認:まず、自社がFTAに正式登録されているか、登録期限内での申告か否かを確認します。既に登録されている場合は、登録内容(住所、事業区分、代表者情報)の最新性を検証します。
- 2 QFZP継続適格性の評価:フリーゾーン企業の場合、現在のQFZPステータス維持の可能性を評価します。適格活動の実質性、従業員・オフィスの実在性、帳簿記録の完全性を検証し、失格リスクを低減します。
- 3 中小企業救済措置の失効対策:2026年末で救済措置が失効します。AED300万以下の企業は、2027年度から4ヶ月の厳格な申告期限が適用されることを想定し、事務体制を強化します。
- 4 移転価格文書の整備とAPA検討:関連者取引(親会社との取引、グループ企業間の費用負担)がある場合、移転価格文書を整備します。必要に応じて、ユニラテラルAPA申請の検討を開始します。
- 5 DMTT(Pillar 2)の影響評価:グローバル売上USD7.5億以上のグループに属する企業は、DMTT(15%最低税制)の影響評価を開始します。国別ルール報告書の準備、グループ内の実効税率確認、所得包含ルール計算の準備体制を整備します。
よくある質問
UAE法人税の税率はいくらですか?
課税所得AED375,000以下は0%、超過分は9%です。QFZP認定フリーゾーン企業は適格所得に0%の税率が適用されます。なお、この基準額AED375,000は2026年時点でも変更の予定がありません。
フリーゾーン企業は法人税が免除されますか?
自動免除ではありません。QFZP要件を満たし適格所得のみ0%となります。非適格所得は9%の税率が適用されます。また、QFZP認定を失った企業は、4年間はQFZP資格が停止され、全面的に9%の税率が適用されます。
2026年のUAE法人税で何が変わりましたか?
2026年の主な変更点は以下です:
• 罰則制度の非複利化(2026年4月14日施行)
• 中小企業救済措置の2026年末失効
• ユニラテラルAPA制度の新設(2026年1月開始)
• ESR単独申告義務の廃止
• DMTT(Pillar 2)の導入準備
これらの変更は企業の税務申告・納付業務に重要な影響をもたらします。
UAE法人税の登録期限はいつですか?
新規企業はライセンス発行から3ヶ月以内の登録が必要です。期限を超えるとAED10,000の罰金が課せられます。既に登録されている企業も、登録情報の最新性確認は重要です。
日系企業がUAE法人税で注意すべき点は?
日系企業が注意すべき点は以下です:
• 移転価格文書の整備:親会社との取引がある場合、移転価格文書が必須
• QFZP維持:フリーゾーン企業は年間の適格性を継続的に確認
• 中小企業救済失効対策:AED300万以下企業の事務体制強化
• 罰則改革対応:4月14日以降の罰則計算方式への対応
• DMTT影響評価:グループ企業が対象の場合、Pillar 2への準備
これらの対策を早期に実施することで、コンプライアンスリスクを最小化できます。
UAE法人税は9%(AED375,000超)の低税率を維持しつつ、2026年は罰則改革・中小企業救済の失効・APA新設・ESR廃止と制度が大きく動く転換期です。フリーゾーン企業はQFZPの継続的モニタリングが不可欠であり、日系企業は移転価格文書の整備とDMTT対応を含む5つのステップを早期に実行することが求められます。
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