セミナーレポート|UAE HRコンプライアンスの全体像 ― 3つの柱と多くの企業が陥りがちな落とし穴
2026年8月18日、UAEで事業を行う日系企業のHR担当者・拠点責任者を対象にオンラインセミナーを開催しました。日系企業を中心に多数のお申込みをいただき、活発な質疑応答が行われました。
開催概要
| テーマ | The Big Picture of UAE HR Compliance ― The 3 Pillars and the Pitfalls Many Companies Overlook |
| 日時 | 2026年8月18日(火)UAE時間 10:00~11:00 |
| 形式 | オンライン開催(Zoho Webinar) |
| 登壇者 | Sukhada Kulkarni(Biz Easy FZCO HR Manager & Advisory Lead) |
| 使用言語 | 英語 |
| お申込み状況 | 日系企業を中心に、多くのお申込みをいただきました |
| 当日の参加状況 | 活発な質疑応答が行われ、高い関心をお寄せいただきました |
セミナーの狙い
UAEのHR実務は、給与や採用といった「タレントマネジメント」の領域と、契約・労務・退職手続きに関する「コンプライアンス」の領域に分けて捉えることができます。今回のセミナーでは後者に焦点を当て、UAEで事業を行う企業がリスクを負わずに運営するために必ず押さえるべき3つの柱――採用(Hiring)・労務管理(Managing)・退職(Exiting)――を、実際の相談事例を交えながら解説しました。
日本本社が前提とする「終身雇用・年功序列」的な人事慣行と、UAEの「有期契約・都度更新」を前提とした実務との違いに焦点を当て、日系企業が見落としがちなギャップを具体的に示した点が今回の特徴です。
当日の主な内容
柱1:採用 ― 雇用契約とワークパーミットの連携
「署名があれば有効」という思い込みが最も多い誤解であると指摘。UAEでは無期雇用契約が既に廃止されており、契約は有期契約のみ、試用期間は最大6か月、雇用開始から14日以内のMOHRE(または管轄フリーゾーン当局)への登録、アラビア語・英語の二言語対応(実務上はアラビア語が優先解釈される)が必須要件であることを解説しました。
柱2:労務管理 ― 給与、WPS、労働法コンプライアンス
2026年6月1日施行のMinisterial Resolution No. 340 of 2026(旧Resolution 598/2022を代替)により、WPSの新規採用者に対する30日間の猶予措置が撤廃され、入社初月から適用対象になった点を紹介。「給与を支払っている=WPS準拠」ではなく、支払いのタイミングと処理の可否がチェックされる仕組みであることを解説しました。
柱3:退職 ― オフボーディング、退職金、ビザキャンセル
退職金の計算は基本給(Basic Salary)のみを基準とし、総支給額(Gross Salary)を用いる誤りが最も多いことを指摘。勤続5年目までは基本給21日分、5年目以降は30日分に切り替わる点、最終精算は退職日から14日以内に完了させる必要がある点(労働法第53条)を解説しました。
参加者データ
お申込みいただいた方の中で最も関心が高かったテーマは以下の通りでした(複数のトピックから最も関心のあるものを1つ選択)。
| 全体像(3つの柱の概要) | 約半数 |
| 柱1 ― 採用:契約・ワークパーミット | 約4分の1 |
| 柱2 ― 労務管理:給与・WPS・労働法 | 約5分の1 |
| 柱3 ― 退職:オフボーディング・退職金 | 少数 |
自社がWPS(賃金保護システム)の対象かどうかを尋ねたところ、約3割が「わからない」と回答しており、制度の適用範囲そのものへの理解にギャップがあることが確認できました。
参加企業の多くは1~19名規模の小規模拠点で、日系企業のUAE拠点における人員規模の実態を反映する結果となりました。参加者の所在地はUAEが中心で、日本本社やインドなど周辺国からの参加も見られ、地域統括的な立場からの関心の高さがうかがえました。
参加者の声・質問(抜粋)
当日はQ&Aセッションにも多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。寄せられた質問の一部を抜粋してご紹介します(内容の趣旨を損なわない範囲で編集しています)。
- 「オファーレターに署名済みの候補者は、就労ビザの手続き中でも就業を開始できるか」
- 「WPSは従業員数やフリーゾーンの種類に関わらず、すべての企業に適用されるのか」
- 「現時点で具体的な課題はないが、今後問題が出てきた際は個別に相談したい」
ライブアンケートでは、退職(オフボーディング・退職金)を最も気になる領域として挙げる声が多く、実務担当者にとって最終精算・退職金計算の正確性への関心の高さがうかがえました。一方で、セッション終盤の理解度アンケートでは「3つの柱すべてについて自信を持てた」との回答が最も多く、実務にすぐ活かせる内容として好意的な反応をいただきました。
今後の展開
本セミナーの内容は、ホワイトペーパー「UAE HRコンプライアンスの全体像」としても公開予定です。あわせてご活用ください。
次回は、タレントマネジメント領域である「UAE給与ベンチマーク・人事評価制度設計」をテーマにしたセミナーを予定しています(詳細は決定次第、改めてご案内いたします)。
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