- 公開日: May 31, 2021
- / 更新日:April 14, 2026
【2026年最新】UAE会社法を徹底解説
外資100%所有・2021年改正から最新動向まで
Federal Decree Law No.32 of 2021の核心から、2026年施行の最新改正まで。日系企業が知るべきUAE会社法のすべてを、実務視点で網羅的に解説します。
UAE会社法の歴史と2021年改正の背景
UAEの会社法は、国の経済多角化戦略と歩調を合わせて進化してきました。2015年に施行されたFederal Law No.2 of 2015は、それ以前の1984年法を全面改定し、現代的な会社法制の基盤を築きましたが、外国投資家にとって最大の障壁であった「UAE国籍者51%以上の出資義務」は依然として維持されていました。
この規制は長年にわたり、外国企業がUAE本土(メインランド)で事業を行う際の構造的な制約となっていました。多くの外国企業は、フリーゾーンでの設立を選択するか、あるいは信頼できるローカルパートナーとの合弁を余儀なくされていたのです。
2020年代に入り、UAEは「ポスト石油時代」の経済基盤構築を加速させます。Vision 2030に基づく経済多角化、COVID-19後の外国投資誘致の必要性、そして近隣諸国との投資先としての競争激化が、抜本的な法改正の推進力となりました。
UAE会社法の主要マイルストーン:1984年 Federal Law No.8(初の会社法)→ 2015年 Federal Law No.2(全面改定)→ 2020年 Cabinet Resolution(外資規制緩和開始)→ 2021年 Federal Decree Law No.32(外資100%解禁、2022年1月施行)→ 2025年 Federal Decree Law No.20(複数出資クラス等、2026年1月施行)
2021年改正の核心:外資100%所有の解禁
Federal Decree Law No.32 of 2021の概要
2021年に公布され2022年1月2日に施行された新会社法は、UAEの商業環境を根本から変革する法令です。従来のFederal Law No.2 of 2015を全面的に置き換え、外国投資家に対する所有制限を原則撤廃しました。
新会社法の第10条は、従来の「UAE国籍者51%出資義務」を削除し、自然人・法人を問わず外国投資家がUAE本土企業の株式を100%所有することを可能にしました。これにより、1,000以上の商業活動において完全外資の企業設立が認められるようになっています。
LSA(ローカルサービスエージェント)制度の廃止
新会社法のもう一つの画期的な変更が、LSA制度の廃止です。2021年4月1日以降、外国企業およびフリーゾーン企業の支店は、LSAなしで直接登録できるようになりました。既存の支店についても、公証人の前での解約合意書またはLSAからの精算確認書をもって、LSA契約を終了させることができます。
個人事業(Sole Establishment)および民事パートナーシップ(Civil Company)については、引き続きLSAが必要です。また、支店は引き続きUAE居住の連絡担当者を指定する必要があります。
「戦略的影響活動」の制限(7分野)
Cabinet Resolution No.55 of 2021に基づき、以下の7分野は「戦略的影響活動」として外資所有に制限が残ります。
| # | 戦略的影響活動 | 規制内容 |
|---|---|---|
| 1 | 安全保障・防衛・軍事 | 所管当局が外国人出資比率の上限を個別決定 |
| 2 | 銀行・両替・金融会社 | 中央銀行の承認が必要、取締役会構成に制限 |
| 3 | 保険 | 保険監督当局による個別審査 |
| 4 | 通貨印刷 | UAE国籍者の出資が必須 |
| 5 | 通信 | 通信規制庁による出資比率制限 |
| 6 | ハッジ・ウムラサービス | UAE国籍者のみ |
| 7 | コーラン・宗教施設 | UAE国籍者のみ |
これらの分野では、所管する規制当局がケースバイケースで外国人出資の可否、出資比率の上限、取締役会のUAE国籍者枠などを決定します。一律の基準はなく、事前に規制当局への確認が不可欠です。
会社形態の選択肢 ― 比較表
UAE本土で事業を行う場合、主に以下の4つの法人形態が検討されます。
| 項目 | LLC | Private JSC | 支店 | 駐在員事務所 |
|---|---|---|---|---|
| 法人格 | 独立法人 | 独立法人 | 親会社の延長 | 親会社の延長 |
| 外資所有 | 100%可能 | 100%可能 | 100% | 100% |
| 株主数 | 1〜50名 | 1名以上 | 該当なし | 該当なし |
| 責任範囲 | 出資額を限度 | 出資額を限度 | 親会社が全責任 | 親会社が全責任 |
| 営業活動 | あらゆる商業活動 | あらゆる商業活動 | 親会社と同一 | 市場調査のみ |
| 法人税 | 9%(AED 375K超) | 9%(AED 375K超) | 9%(UAE源泉) | 原則非課税 |
| 適したケース | 本格的UAE事業展開 | 将来の上場・資金調達 | 親会社ブランド活用 | 市場調査・初期段階 |
日系企業のUAE進出では、LLCが最も一般的な選択です。独立法人としてのリスク遮断、100%外資所有、運営の柔軟性を兼ね備えています。市場調査段階では駐在員事務所、親会社ブランドを活かす場合は支店も有効です。
コーポレートガバナンス要件
取締役会構成
Public JSCには最も厳格な要件が適用され、SCA Resolution No.3/RM of 2020に基づく強制的コンプライアンスが求められます。LLCについては、取締役会の設置は義務ではありませんが、1名以上のマネージャーの任命が必要です。国籍制限は原則撤廃されていますが、戦略的影響活動に該当する場合はUAE国籍者枠が求められます。
株主総会
LLCでは年1回の株主総会が義務付けられています。総資本の10%以上を保有する株主は、臨時株主総会の招集を請求する権利を有します。
少数株主保護
株主には会社記録・財務諸表の閲覧権、議題追加権が認められています。2026年1月施行のFederal Decree Law No.20 of 2025により、ドラッグアロング権およびタグアロング権が法的に明確化されました。ただし、少数株主が支配株主の行為を直接争う法定救済手段は限定的で、実務上は株主間契約(SHA)が最も有効な保護策です。
監査義務
すべてのUAE企業に公認会計士による年次監査が義務付けられています。2023年6月のUAE法人税導入以降、監査済み財務諸表は税務申告の基礎資料としても重要性が増しています。
UAEでは「書類の存在」ではなく「実際の運用状況」が重視される傾向が強まっています。取締役会議事録の整備、内部統制の文書化、リスク管理体制の構築が、当局やカウンターパーティからの信頼確保に不可欠です。
【2026年最新】2021年以降の追加改正と実務上の変化
UBO登録義務の導入
Cabinet Resolution No.109 of 2023に基づき、すべてのUAE本土・非金融フリーゾーン企業にUBO登録が義務化されています。UBOとは、株式・議決権の25%以上を保有する自然人、またはマネージャーの過半数の任免権を有する者です。UBO登録簿、株主登録簿、ノミニーディレクター登録簿の3種類を維持し、変更は15日以内に更新。違反時はAED 50,000〜1,000,000の行政罰が科されます。
ESRから法人税への統合
2019年導入のESRは、UAE法人税(CT)の導入に伴い、CT制度に統合されつつあります。経済実体の証明は、CT申告における移転価格文書やQFZP要件を通じても求められるようになりました。
法人税導入に伴う会社法実務への影響
2023年6月施行の法人税(税率9%、課税所得AED 375,000超)は、監査済み財務諸表、移転価格文書、関連当事者取引の適正化など、会社法上のガバナンスと税務コンプライアンスを密接に連動させています。
デジタルMOA/AOA(電子定款)
多くの首長国で定款の電子署名・オンライン登録が可能になり、ドバイでは最短1日での会社設立が可能なケースもあります。
新AML法との連動
UBO登録義務はFATF勧告に準拠しており、Federal Decree Law No.20 of 2018(AML/CFT法)と密接に連動しています。
Federal Decree Law No.20 of 2025による5大変更:
① LLCにおける複数出資持分クラスの導入
② 首長国間・フリーゾーン間の法人移転(Redomiciliation)
③ 非営利法人の法的枠組み整備
④ Private JSCの私募発行(SCA条件下)
⑤ フリーゾーン企業の本土支店への会社法適用
支店 vs 子会社:どちらを選ぶべきか
UAE進出において最も頻繁に議論される論点の一つが、支店と子会社(通常はLLC)の選択です。
- 市場参入の初期段階・テスト期間
- 親会社のブランド・信用力を直接活用
- UAE事業の規模が限定的
- 設立コスト・時間を最小化したい
- 連結会計上のシンプルさを重視
- 本格的・長期的なUAE事業展開
- 親会社とのリスク遮断が必要
- UAE現地での独自の契約・雇用が多い
- 将来的な合弁・資金調達を視野
- QFZP適格性を検討
| 判断基準 | 支店 | 子会社(LLC) |
|---|---|---|
| 法的独立性 | なし(親会社の一部) | あり(独立法人) |
| 責任 | 親会社が全責任 | 出資額を限度に限定 |
| 設立コスト | 低い | やや高い |
| 運営の自由度 | 限定的 | 高い |
| 課税 | UAE源泉所得に法人税 | UAE法人として課税 |
| 信用力 | 親会社に依存 | UAE法人として構築 |
| 撤退の容易さ | 比較的容易 | 清算手続きが必要 |
日系企業への実務的示唆
- 1ローカルパートナー依存からの脱却を戦略的に進める ― 外資100%所有が可能になったとはいえ、既存パートナーとの関係解消は慎重に。契約上の精算条件、従業員の帰属、ライセンス移転など段階的な移行計画を策定すべきです。新規進出ならLLC 100%外資が合理的。
- 2UBO登録・AMLコンプライアンスの即時対応 ― グループ構造が複雑な場合、25%以上の議決権保有者を最終自然人まで遡って特定する必要があります。15日以内の更新義務も含め、社内プロセスの整備を急ぐべきです。
- 3法人税と会社法の一体的なコンプライアンス設計 ― 監査済み財務諸表、関連当事者取引の適正化と、移転価格文書、QFZP要件は不可分。会計・税務・法務の横断体制が必須です。
- 4株主間契約(SHA)の充実化 ― UAE会社法の少数株主保護は日本に比べ限定的。合弁時は拒否権、先買権、デッドロック解消条項、ドラッグアロング/タグアロング権を包括的に定めることが不可欠です。
- 52026年改正の活用 ― LLCの複数出資持分クラスやRedomiciliation制度を、資金調達・インセンティブ設計・事業フェーズに応じた法人形態の見直しに活用できます。
よくある質問
はい。2022年1月施行のFederal Decree Law No.32 of 2021により、1,000以上の商業活動で外資100%所有が認められています。ただし、防衛・銀行・保険・通信など7つの「戦略的影響活動」は制限が残ります。具体的な適用可否は各首長国の経済局で確認が必要です。
一律の規定はありません。ただし活動の種類や管轄当局の規定により求められる場合があります。実務上は銀行口座開設や信用力の観点からAED 300,000以上が推奨されることが多いです。
会社の実質的支配者情報を管轄当局に届け出る制度です。Cabinet Resolution No.109 of 2023に基づき、すべてのUAE本土・非金融フリーゾーン企業に義務付けられています。所有権・経営陣の変更は15日以内に更新が必要で、違反時はAED 50,000〜1,000,000の罰金が科されます。
支店は簡易・低コストですが親会社が全責任を負います。子会社(LLC等)は責任限定で100%外資所有も可能。短期的市場参入なら支店、本格的事業展開なら子会社が一般的です。
Federal Decree Law No.20 of 2025(2026年1月施行)により、LLCの複数出資持分クラス、首長国間・フリーゾーン間の法人移転、非営利法人の法的枠組み、Private JSCの私募発行が可能になりました。
UAE会社法は、2021年のFederal Decree Law No.32で外資100%所有を解禁し、2026年のFederal Decree Law No.20でさらに複数出資クラスや法人移転制度を導入。日系企業はUBO登録・法人税との一体的コンプライアンス、SHA充実、そして2026年改正の戦略的活用が成功の鍵です。Biz Easyは法人設立からガバナンス構築まで一気通貫で支援します。
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